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腸骨動脈閉塞性疾患


 動脈閉塞性疾患による下肢痛にはほとんどの場合腰痛や臀部痛は伴いません。しかしながら症状として出る間欠性跛行* が脊柱管狭窄症等で見られる神経性跛行と似通っているため腰痛の既往症のある方は腰部に原因があると思われがちです。よってその鑑別が重要となります。

 動脈閉塞性の間欠性跛行のほとんどが中、高年の方の閉塞性動脈硬化症による腸骨動脈等の足への動脈の狭窄で起こりますが、20〜40歳代の男性では閉塞性血栓血管炎(バージャー病)* が疑われます。

 痛みは上述したように歩行などの運動に伴って現れる下肢に限局した(稀に、腰部や臀部にも)痙攣様の痛みで知覚異常などの神経症状は伴わず、症状の改善に必要な要素も血液供給不足解消のための休憩のみでしゃがみこむなど腰部を屈曲する姿勢をとる必要がないという特徴があります。
 又、末梢血管の収縮を促す喫煙によって症状が悪化するという特徴もあります。

 対処法は喫煙者であればまず禁煙を行なうことで、禁煙のみで症状がずいぶん軽減する場合もあります。
 他は動脈硬化症に対する治療法に準じ、運動療法や薬物療法を行い、症状の重篤なものに関しては手術(人工血管置換術)を行ないます。

* 間欠性跛行 : 
 歩行により足に(特にふくらはぎ)疲労感、鈍痛、強張り、痙攣などが現れ、さらに歩き続けると痛みが強くなり歩行不可能になるが、4〜5分休むと症状がとれまた歩けるようになる状態。

* 閉塞性血栓血管炎 : 
 原因不明の四肢末梢血管の炎症に起因する閉塞性疾患で、発症・増悪には喫煙(受動喫煙も含む)が強く関与している。


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